司法試験黙示録 @gouyokunakaze

3回目受験生。再現答案とか適当に書いてる。ツイッター→@gouyokunakaze

タグ:行政法

知財、憲法に続き、行政法の相場観について。まずは客観的な事実から。

【1回目】
 A評価でした。ちなみに主観はBか、Aもあるのかなと考えていたので一致していた。初めての受験ではあるが、大きなミスなく無難に処理できたと思ってたからねえ。

 平成29年の行政法は、①非申請型義務付け訴訟の訴訟要件の検討、②裁量、③処分性、④個別事情審査義務と書くべき事項は多い一方で、書くべき内容が何なのかは比較的わかりやすい問題であった。ゆえに、誘導に乗りつつ、とにかくすべて書ききるという一種の作業ゲー的な側面だったといえよう。

 俺は①〜④までとにかく誘導には乗ったし、条文も最低限摘示して、三段論法も意識した。事実も使うべきものは広く拾う意識をもって、評価は十分ではないにしても書ききった。途中答案ではない。これでAがきた。

 ちなみに処分性は道路法の解釈が必要で、難問だった。そもそも誘導文が意味不明すぎ。解釈なんかできなかった。だから、規範あげて、適当に条文だけ押し並べて、適当に処分性あり!って書いた。それでもAはきている。上位Aではないと思うけども。

 この年に感じたのは、「なんや、一回目受験で、不合格にはなったけど、行政法ならA取れるやん」ということ。作業ゲーなら事前準備と上記の意識で十分Aは取れることがわかった。なお、模試は下位6%くらいにされたけどな。

ただ、この年、つまり平成29年の問題は全体として良問だと思うから絶対やったほうがいいよ。これやるだけで、裁量、個別事情審査義務の半分、非申請型義務付け訴訟の訴訟要件+原告適格、処分性学べるからね。ただ、処分性はげきムズだからできなくていい。むしろ処分性は24年と25年が大事。処分性ちゃんとわかってる受験生ってごく少数だろうから、合格者でも怪しいだろう、ちゃんとローの教授とかに見てもらうことをオススメする。

【2回目】
 B評価でした。おいおい、下がっとるやないか。

 平成30年の問題は、①原告適格、②行訴法10条1項、③裁量、④裁量だったかな。

 まず、①は得意分野だった。原告適格は事前の準備で決まるとローの教授も話してたし。俺はいつも小田急事件に沿って書くんだが、この年は、反論を踏まえなきゃいけなかった。そうすると、いつもの書き方が崩れるという問題が。それでも、下手に変えるより、適当に反論いれときゃええやろ精神で従来の書き方でゴリ押した。その結果、X1とX2の違いをうまく表現できなかったのが点を落としたゆえんかと分析。

 次に、②恥ずかしながら行訴法10条1項知らんかった。ゆえに、条文摘示できず、条文なき規範をあげてしもた。ここも落とした要因。

 ③と④は原告、被告それぞれの立場だけども、まあ書くことはいつもの裁量なのでね。無難に。

 これでBだったわけだが、①と②のミスからすればまあ納得。それに得点分布と照らし合わせたら、Aに近いBだったはず。手応えなかったけど、Bで守れたのは少しホッとした。

 この年、つまり平成30年の問題は、29年に比べたら過去問としての重要度が下がると思う。裁量は別に他の年でいいし、原告適格も他の年でもいいし。行訴法10条1項知らんやつはこのブログ読んだらあとで一回条文引いてみて。それだけでもいい、やることは原告適格みたいなもんだし。詳しくは行政法黙示録の記事とか読んで。処分性もそのうち書く。


 以上、2回の受験を通して感じたのは、行政法は俺でもAやBが取れる程度にレベルは低いということ。これは採点実感見てもわかるけど、一応の水準とかみると「え?これでええんか!?せやかて司法試験やで、工藤」ってくらいのレベル(苦手な人にはディスりに聞こえるかも、すまん)。

 俺ができていたのは、
・裁量のところで途中答案等の書き負けがない
・誘導は無視しない
・三段論法は意識
・個別法をなるべく引く

このあたりかな。逆にできないのは、
・事案に即した深い考察
・個別法の解釈
・スペシャルな事実の評価


こんなところ。ということは、できなかった3つは上位Aの要件ということになるんでしょう。もっとも、これは作業ゲーだった29年や30年にのみ妥当する可能性もある。

【3回目】
 さて、今年はどうか。①違法性の承継、②補充性の要件の検討、③裁量と、書くべき内容はひとつ減った。とすると、ここ2年と比べると作業ゲーというよりは現場でじっくり考える系の問題といってよい。とすると、従来よりは深い分析が必要、特に②とかね。そして、それが答案に反映されないと高い評価は取れないのかもしれない。

 それでも、Aは取れるんじゃないかあと。①違法性の論証も平成28年の出題趣旨に沿って書いたし、条文も(解釈こそできていないが)それなりに挙げた。②は、既判力とか使って説明できてないが、直截の規範定立、争点訴訟の指摘等は行訴法45条挙げてるし。③は例年通りの裁量。もちろん上位Aたる①の個別法解釈や、②の説明の不足、③の評価の物足りなさはあるけど、少なくともBには乗っているでしょう。

 あ、友人の行政法答案は実は読んでません。なぜか、受かった友達は行政法ミスってる人が多くて俺のほうができてたから。だからそのあたりの感覚はわからないや。

ちなみい3回目受けるにあたって、行政法の勉強はほとんど何もしてません(自慢とかじゃなくて事実として!!!)。フラグ立ててないぞ。おしまい

行政法黙示録、裁量についての第2弾です。

本当なら1記事にすべてまとめたいところだけど、文字数が多すぎるのと、通常の裁量論とは明確に区別して論じる必要があるため、その2と題することに。実際、平成29年の司法試験では、通常の裁量論と、当記事の裁量論が両方とも出題されているため、重要なのは間違いない。

まあ、何の話かというと、いわゆる行政規則が出てきた場合の話ね。この場合には、その1で論じたこととは違った論証が必要になります。ざっくり言えば、①行政規則の法的性質→②合理性判断(+当てはめ)→③個別事情審査の論証+当てはめ評価という手順。

[①行政規則の法的性質と法との関係の検討]
行政規則のポイントは、以下のとおり。
1.「法規命令」と対立するものであり、あくまで内部的な基準にすぎず、国民の権利義務には影響しない。ゆえに、法律の委任なく自由に定めることができる。
2.解釈基準(例:通達)と裁量基準(例:審査基準、処分基準←この違いわからないようでは困る、行手法読んでw、行政指導指針)に区別される。ここら辺は、処分性の議論でも出てくる。
3.

試験でまず大事なのは、「あ、これ、行政規則だ!」と気が付けること。もっとも、このあたりは誘導がされることが多く、平成29年では、議事録の中で、”内部基準”という文言が使用されているため、上記1の定義そのまま。そして、その”法的性質…を検討し”との誘導もある。比較的簡単ではあるが、事前にわかっていなければ書くことはできないだろう。


では、肝心な何を答案で書くべきかという点。同年の問題の誘導では、”道路法との関係を検討し”との文言もある。いろいろ考えた結果、ここをスタートにすると書きやすいことがわかった。とりあえずざっとしたストーリーはこう。

〇〇法は、行政庁に裁量を認めている→これを受けて、当該行政庁が裁量基準を設定している→裁量基準ってのは、つまりは行政規則、国民の権利義務に直接の影響がない→これに反しても、裁判所がいうところの「違法」ではない

まずは、このストーリーを書くこと、これが誘導に沿った書き方。これを書けば、最低限、内部基準の法的性質も法との関係も検討したことになる。これを答案チックに書くと、〇〇法からすれば、行政庁には一定の裁量が認められるところ、B市は、これを受けて、裁量基準を設定している。そして、裁量基準は、法規ではなく、国民の権利義務に直接影響しないため、これに違反した場合であっても、原則として、違法ではない。とまあこんな感じ。

時間的制約を考えると、裁量ある根拠の二つとか書いてる暇はないはず。俺も答案ではいつもこれしか書かない。予備校の論パ知らないから、もっと長いのかもしれないし短いのかもしれないが、俺はこれ。それでもローの起案では合格点もらえてたからいいと思うよ、これで。大事なのは、法規命令と行政規則の違いわかってますよー、行政規則に反しても、違法じゃないんですよーってことを伝えることかと。なんなら、裁量基準という言葉を無理に使わなくても、講学上の行政規則に当たるから~という言い方でもいいのかもね。

[②基準の合理性の判断]
ここはざっくりでいいよ。ただ、何も書かないのは怖いけどね。規則といえども、一定の合理性を有している必要があるとこと、本件では、〇〇であるから、合理性も認められる。これでいいと思う。
何でかっていうと、合理性すらない規則なんて出題するとは考えられないから。それってよっぽど糞なルール作っちゃうってことだからね。司法試験でそんな規則さすがに出さんやろ、と。だから、ここは上の書き方で、さらっと一文で合理性の判断までしちゃいましょう。大事なのはこの後だから。あ、注意点は、”規則それ自体の合理性”だからね、問題文の具体的事実使っちゃだめよ。規則そのものチェックするのよ!!

[③自己拘束論・個別事情審査の論証]
ここは、2パターンに分かれる。事実から考えて、以下のAかBか考えてください。
A ”規則どおりにやってくれよ!やらないなんて違法だ!!”
B ”規則どおりにやるなよ!!もっと柔軟に対応しろよ!!”

司法試験ではどちらのパターンも出題される。Aなら自己拘束論を、Bなら個別事情審査義務の論証が必要。似てるけど違うから区別しようね。

〈Aパターン 自己拘束論〉
基準があったら、しかもそれが例えばウェブサイトで公表されていたら・・・。当然その通りやるものと信じる。それが裏切られた。ふざけるな!!という主張になる。答案チックに言うと、(上記合理性判断ののち)もっとも、基準として示された以上、平等原則や国民の信頼を保護する必要がある(ここが理由付け)ゆえに、裁量基準といえども、それを適合しない合理的理由がない限り(ここが規範)、行政機関は、当該基準に拘束され、これと異なる取り扱いを行うことは、裁量権の逸脱・濫用に当たり、違法である。とこんな感じ。
この後、当てはめ。当てはめでは、あえて基準に従わない合理的理由の有無を探す。あれば適法、なければ違法。まあ、ない事例の方が多い印象。特に原告の主張という指示があるときは、違法にもってく必要があるから当然、合理的理由はない、だから違法だ、という結論になる。

〈Bパターン 個別事情審査義務〉
確かに…基準どおりだとそうなんだけどさあ…でも、そんなのおかしいじゃん!融通利かせてよ!!という主張を原告がするときに使う。Aよりなんかごねてる感あるよね、これ笑。でも、函館方面公安委員会事件なんかはこれを認めるような言い回し(訴えの利益の判断の中でだけど)。
答案では、(上記合理性判断ののち)もっとも、裁量基準に厳格な拘束を認めることは、かえって個別事情に応じた柔軟な判断ができなくなるおそれがある(理由付け)。従って、個別の事情に応じ、基準に従うべきでない特段の事情がある場合には(ここが規範)、基準に即した判断は、違法となる。とこんな感じ。
この後、当てはめ。探すべきは、基準に従うべきでない特段の事情。あれば違法、なければ適法。Aパターンとは逆だから注意ね。これも原告筋でいえば、特段の事情がある、ゆえに違法ともってくことになる。

Aは、あえて基準どおりにやらない合理的理由があるかどうか。Bは、基準どおりにやるべきでない特段の事情があるかどうか。似ているようで違う。ただ、やってることは結構似てる気がする。合理的理由、とか、特段の事情って言い回しにこだわるべきかどうかはわからない。規範さえ立てればいいのかも。

なお、AもBもいわずもがな評価は必要。事実を羅列するだけではダメ。まあここも時間ないだろうからまとめて評価せざるを得ないかも。評価ワードは、裁量①の記事とだいたい似たり寄ったりになるよ。

[まとめ]
1.行政規則が問われているときは、その法的性質からスタートしなければならない。←超重要
2.合理性判断はさらっと(どうせ規則そのものには合理性くらいあるから)
3.問題文から自己拘束論で書くか、個別事情審査義務で書くかを読み解くこと。そして論証


この記事と前回の裁量その1を読めば、平成26年以降の本案の問題はすべて解ける、ってのは言い過ぎで平成28年の違法性の承継と要件解釈はダメか。とりあえず平成26年と27年の本案の設問だけでいいからやってみてほしい。そうすると、A・Bパターン両方マスターしたことになるからね。あとは、平成29年の設問4もこれでできる。ぜひとも解くことをおすすめする。

司法試験に関するテキストやブログなんかはめちゃくちゃあるので、細かい勉強、解説はそちらで。この記事では、自分が勉強してきたことを元に、「〜こう書いたらいい」と教わったことを吐き出していくことに。目的は、うーん・・・全然勉強してないからちょっとした動機付けかな、と。ついでに誰かの一助になれば嬉しい。答案に実際に書く文言は赤文字にしておきます。

意識低いので継続するかはわかりませんが、続く限りは連載していくつもりなので、温かく見守ってくださいませ。 ですます調も適宜使いますが、口語調で、一人称も俺で書くことにする。
さて、行政法第一回目は、司法試験でも最頻出論点である「裁量」について。平成26年からは毎年出題されており、ここで書き負けないことが行政法は特に大事。そうすれば下位にはならないはず。逆に上位になるには必須。

しのごの言わずにまず「裁量」を書けるようになるのが行政法のファーストステップ。もちろん、原告適格とか処分性も大事だけど、「裁量」の方がよっぽど大事だし、コスパもいい。

ちなみに、俺は本試験1回目はA、2回目はB。両年ともに裁量は出題されており、少なくとも下位答案ではないことは一応、担保されてるはず。

「裁量」とは何か?とかそんなことをつらつらと書くつもりはありません、司法試験受験生ならある程度わかっているということを前提にしてますのでね。そういうのは基本行政法とか行政法の流儀(読んだことないです、ごめんなさい)あたり読んでください、はい。

問われ方にもよるけど、司法試験の基本は訴訟要件と本案の主張。俺はロー2年のときこの区別さえも知らんかったけどな、民訴の問題だけども。もちろん、これもわかってる前提で。

言わずもがな「裁量」は…そう、本案の問題。原告側に立つ場合等、若干の設問の違いはあれど、基本的には、処分の違法性を問う場合が多い。「〜いかなる主張が考えられるか」等。なお、くどいようだが、”本案上の主張”などと細かく誘導してくれるケースはあまりないので、問題文から訴訟要件と本案どちらの問題かを見極めること。

さて、気になる書き方だが、①いわゆる論証の吐き出し、②当てはめと評価、そして、③結論ということになる。
[①論証吐き出しステップ]
まず、裁量あることを2つの理由を示して述べること。一つは、処分の根拠規定の文言の抽象性。例えば、「〜できる」と書いてあれば、処分をしてもいいししなくてもいいんだから、裁量がある根拠になる(基本行政法P130、141によれば例外もあるらしいが、試験対策としてはあんまり考えないほうがよさげ)。これを答案っぽく書くと、法は、処分の根拠規定において、「〜できる」(法◯◯条)と定めており、その文言は抽象的である。とまあこんな感じ。これでいい。

次に、2つ目の理由として、処分するかどうか決めるにはいろーんなこと考えないといけないんだよ、簡単には決められないんだよ、だから、裁量あるんだよってことを指摘する。これを上に続けると、また、これに当たるか否かは(処分を行うか否か)は、◯◯、☓☓、△△等、諸般の事情を総合しなければならない。とこんな感じ。で、このいろーんな◯◯とか☓☓は、事案によって、というか出てきた個別法によって自分で考えなきゃならないから、ここは少しむずい。でも、たいていは1条とか条文がヒントにもなる。これが個別法の解釈ってやつ。ただ、解釈なんて難しい言葉使うのが悪い。もっと素直に、自分がハンコ押す立場で考えればいいだけ。例えば、目の前にいる公務員を懲戒処分するかどうかを決めるとき、何を考えますか???
なんでそんなことしちゃったのか(答案っぽく言えば原因、動機)、これまでの勤務態度はどうなのか(当該公務員の行為の前後の態度)、これまでのやらかしはあったのか(懲戒処分等の処分歴)、他の公務員はどう思うのか(他の公務員及び社会に与える影響等)。こういうことを現場でそれっぽく書けばよい。ちなみにこの文言は、神戸全税関事件から取っています。まあこの言葉を覚える必要はまったくなくて、問題文に示された具体的事実から逆算して、抽象的考慮要素を立てるという感覚ですね。これ、全科目で使えるテクニックだから覚えておくといいよ。逆算よ、逆算。

もう一つ注意事項として、専門技術裁量というマジックワードがある。これを使う受験生は多いらしい。しかし、これは伊方原発訴訟のような、超超超例外な場合にのみ使うものらしく安易に使ってはいけないとのこと。学者ではないので細かいことは知らんが、そう教わった。

そして、以上からすれば、いかなる◯◯処分を行うか否かにつき、当該行政庁に一定の裁量が認められることになる。という具合に裁量がある旨を指摘。最後に、規範を立てる必要があるので、従って、裁量権に逸脱・濫用ある場合には、その処分は違法となる(行訴法30条)。と結ぶ。これで論証終わり。あ、30条じゃないときもあるからもちろん注意ね。

ちなみに、正確な規範は、判断過程審査を前提とすると、社会通年に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるから・・・となる(本当は「判断が全く事実の基礎を欠く場合」というのもあるが、めちゃくちゃ糞な行政庁でもない限りこれを使うことはないから、司法試験ではこのパターンはないだろう)。ただ、これ書いてると時間足らなくなるから、規範レベルでは出さなくとも、結論で出せばよい、と聞いている。それでも読み手には、「あ、こいつ判例わかってんな」と伝えることができる。俺は本番もこれ。不安な人は丁寧に規範として書いてもいいだろう。

要するに、①論証吐き出しは、裁量の根拠を示す2つの理由→つまり裁量がある→ゆえに濫用したら違法っていう3ステップを書けばいい。ただ、他の科目のように自動書記で吐き出せるものではなく、ある程度考えないと書けない仕組み。特に、裁量ある理由の2つ目のほうね。これはもう現場思考だからね、本番は土地収用だったけど、周辺の環境とか人口、交通量がどうとかそんなこと書いたような気もするけど忘れた、再現答案でも見てくださいな(って言われて律儀に見る人0人説)。

[②当てはめ評価]
ここはもう手をたくさん動かす時間です、はい。特に、設問前半が訴訟要件で、後半に裁量だと、時間的制約もある。上手く端折りつつ、「ちゃんと事実全部抜き出してますよー試験委員のみなさーん」って感じでどんどん写しましょう。一つの事実に1点あると思って、よし、今点数稼いでるぞおって気持ちで書き殴ってしまえ。

もちろん評価も必要。細かくすべての事実について評価できれば超優秀でしょうが、いかんせん時間が。というわけで、俺はわりとまとめて評価することが多い。その際は、次のα・β・γのいずれかの評価ワードを使えばおk。複数使うときもある。
 本件では、、、(事実羅列)のように、◯◯等を考慮すべきところ、★★を考慮している。従って、
α 事実評価に明白な誤認があり ←あんまり出てこない
β 本来最も重視すべき諸要素、諸価値を不当、安易に軽視し、その結果当然尽くすべき考慮を十分に尽くしておらず(=考慮不尽) ←けっこう使う
γ 本来考慮にいれるべきでない事項を考慮にいれ、もしくは過大に評価すべきない事項を過重に評価して(=他事考慮) ←αよりは多いけどβよりは少ない
 ・・・処分が行われたと認められる
 これも文言を正確に覚える必要はない。大切なのは、この3類型を理解して事案に即した当てはめをすることによって、判例わかってますよをアピールすること。さほど難しくはないかと。特に議事録の誘導文とか見ると、「〜の事実を知事は考慮してくれません」とか書いてあるからね、考慮不尽で書けってのは明白。

[③結論]
三段論法を意識して、③としたけど、まあ②のすぐあとに1文書くだけだからたいした内容じゃない。ただ、昔、起案で指摘された注意事項があるので書いておきます。上の文に続けて、
その結果、その判断は、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるから、本件処分は、裁量権の逸脱・濫用に当たり、違法である。と結論づける。特に、前半部分の「その結果、その判断は」というところが重要らしい。これを書かなかったら、「判断過程審査で書くように」と赤を入れられたことがある。(いわゆる社会観念審査に見えたようだ)。だから、注意せよとのこと。予備校本とか読んでないから知らんが、俺はそう言われた(判断過程で書きました!って言ったけど伝わらなかった)。

[まとめ]
①論証は、2つの理由を示し、裁量ある旨の指摘と規範立て(何を考慮すべきか個別法をヒントに考えること)
②当てはめは時間勝負!評価も忘れずに
③その結果…として社会観念著妥当性欠如故違法の結論


以上かな。特別な演習書はいらないので、司法試験過去問をゴリゴリ解けばOK。あとは受かった人、特に行政法の成績がちゃんといい人に見てもらってOKが出ればいい。一回身につければ見直さなくてもできるし得点源にもなるコスパ最強論点なのでぜひ早期の習得を。

P.S 今日で司法試験合格発表までちょうど1ヶ月・・・ぐぬぬ。

「(原告適格はないと思ったが)処分性出さないんかー。その分、補充性の検討なんだなあ。違法性の承継はまあ一応のことは書けそうだし、最後はいつもの裁量。そんな変な問題ではなさそうかな」

これが第一印象。

 設問1は問題文読む前に、設問1を読んだ時点で違法性の承継とわかる。違法性の承継の議論は、先行・後続処分のいずれもが「処分」である場合の話なので念のために確認すると、事業認定も収容裁決もどっちも処分なのは明らか。よって、ここは深入りはせず。
 むしろ、取消訴訟の排他的管轄と出訴期間の潜脱という原則論は示さなきゃならないってのが確か平成28年の趣旨・実感。そんな記憶があったため、ここは多少丁寧に。目的効果の同一性と手続保障という2点から判断するわけだが、前者に関しては、先行の目的→後続の目的→同じ→先行の効果→後続の効果→効果も同一というふうに書けば丁寧だろうと思った。正直うまくは書けなかったが、最低限の条文を示す意識だけはしていた。
 一方、手続保障は難しい。反論は、「告示したじゃないか」ということなんだろう。でも、原告側の主張を軸にしてほしいっぽい誘導だったしこれを乗り越える理屈が必要。正直、ここらへんの再現は自信ありません。でも、手続保障に関する規定はいっぱい引いた覚えある。そのうえで、最終的にどう説明したかは覚えていないが、手続保障は不十分だ、だから違法性の承継認めると結論は出したはず。
 勉強した違法性の承継は、だいたい先行と後続処分が他の規定に基づいてされている場合だったと記憶してるだけに(だからこそ問題になるのだが)、どっちも同じ土地収用法の場合ってなんていうんだろう、逆に書くことがないというか同一なの当たり前やろって気持ちになっちゃって逆に文章化するのが難しかった。

 設問2(1)。補充性。「より直截的な方法」この辺りはまあみんな思いつくんだろうが(マジで裁量と処分性、原告適格しか勉強しない人もいると聞いたことがあるのでそういう人は厳しいだろうが)、自分含め「ちゃんと」理解して準備している人がどれだけいたのか。
 補充性の要件って要するに、「A→C訴訟で解決すればいいでしょ?A→B無効のほうが直截なのはなぜ?」という問いですよね。誘導もまさにここを聞いてるからとりあえずはこれに従って書く必要がある。
 本件では、A→C訴訟として何が考えられるのか。知っている教科書事例は、すでに明け渡しまでされている場合だった。この場合、A→C所有権確認しても、換地処分のやり直しまで求めることはできないから、A→B換地処分無効確認のほうが直截的というのは知ってた。ノート確認したら最判S62.4.17百選Ⅱ186〈7版〉と書いてある。5chだともんじゅってやたら書いてあるけど、どちらかというとこっちに近いような気もする。まあ、それはいい。
 本番では、ここに一番時間を使ったかもしれない。結局、とりあえずと思って、所有権確認訴訟に逃げて書くことにした。あとは争点訴訟(行訴法45条1項)とかの条文を引きながらという感じだが、本番はもう少し具体的に書いたような気もするんだよねー。どのみち、この辺りの理解不足だったのは間違いなくて、それがどこまで悪い意味で伝わってしまうか。。。
 5ch見ると、明渡義務不存在確認とか、差止訴訟なんかも見かけたな。前者は思い付かなかったしなるほどな、と思った。後者はどうだろう。少なくとも、抗告訴訟としての差止訴訟はダメとは思うんだが、民事の差止訴訟はどうか。もんじゅを想定するのはわかる。ただ、あれは原発という超がつく特殊事例で、「人格権」を根拠としたからこそ認められたものだよね、確か。そうなると、人格権なんか関係ない本件ではその理屈は妥当しないような気もする。。。まあ、あんまりわからんのであとは出題趣旨を待とう。

 (2)はまあなんというかいつもの裁量。ひたすら手を動かすゲームでしょう。難しかった点でいうと、原告が「疑問がある」みたいな主観面があったり、事実誤認、他事考慮、考慮不尽のいずれに当たるかがよくわからなかった。まあ、最低限、道路ネットワークの話、小学校の騒音と生物保護うんぬんの話、防災と井戸の話をしておけば一応の水準には達するのではと思う。その他、特記事項はなし。

 全体として論点自体はわりと基本的な問題だったように思う。一応の水準としては、
・違法性の承継についての最低限の論証、目的効果の認定、手続保障の有無の認定
・補充性の規範、ありうるA→C訴訟、補充性満たすかの検討
・裁量の指摘、各事実の指摘

まあこんなとこですかねー。そもそも実受験者が4500人前後の試験で、しかも3割が短答落ちで論文採点されないという中で、一応の水準は果たして何位あたりを指すのか、それもわかりませんが。

ちなみに、私はロースクールに入学してから行政法を学んだ身ですが、1回目受験でA、2回目はB評価でした。採点実感見ればわかるけど、他の科目に比べてレベルは高くないよね、行政法は。最低限の論証と当てはめ評価、そして、誘導に沿って書くことをしてればある程度の評価は得られると思うよ。

主観的評価予想はBということにしておきます。

設問1 
 Aは、本件取消訴訟において、本件事業認定の違法を主張することができるか。
(1)まず、B県としては、本件事業認定の違法は、本件事業認定時における取消訴訟時によって主張されるべきであり、そうでなければ出訴期間(行訴法14条1項)が無意味になるため、本件取消訴訟において、その違法の主張はできないと反論する。
 取消訴訟の排他的管轄により、処分はさしあたり有効なものとして扱われる。また、法は出訴期間を厳格に定めて、その法的安定性を図っており、その潜脱を防止するためにも、原則として、先行処分の違法を後続処分の取消訴訟において主張することは認められない。もっとも、これを認めるべき必要性ある場合も否定できない。従って、先行後続処分それぞれの目的効果が同一であり、かつ、先行処分時における手続保障が不十分であるといえる場合には、例外的に違法性の承継を認めるべきである。
(2)先行処分たる本件事業認定は、関連事業を行うために土地を収容する場合になされるものである(16条)。そして、その目的は、国土の適正かつ合理的な利用に寄与する点にある(1条)。
 後続処分たる本件権利取得裁決も、上記事業認定の後に、その土地の収容を可能ならしめるものである。ゆえに、これもまた本件土地の合理的な利用を達するために行われるものであるから、両者の目的は同一である。
 次に、効果について。本件事業認定がされると、起業者は、裁決の申請を求めることができ(39条1項)、47条各号事由ない限り、その裁決がなされることになる(47条の2)。とすると、両者は一連の手続として行われており、同一の効果を有する。以上によれば、目的効果が同一である。
(3)次に、手続保障について。B県としては、法26条1項に基づき、その理由を付し、告示していた以上、Aに対する手続保障は十分であったと反論することが考えられる。
 法は、手続保障として、事業認定の際に起業者に対し、利害関係者への説明を義務付け(15条の14)、事業認定がなされた後は、告示(26条1項)、その通知(26条の2第1項)、図面を公衆の縦覧に供すること(2項)、必要な措置(28条の2)等を定めている。
 本件では、確かにB県は上記告示を行い、また、C市は、あくまでも任意買収交渉を行い、Aとも協議をしているから、少なくとも、その限りでAが何らかの訴訟活動をなしえたとの手続保障があったとも思える。しかし、上記のように各種の手続保障規定があるにもかかわらず、行ったのはその告示のみであり、他の手続がなされていない。ゆえに、本件事業認定時における手続保障としては、不十分であったといえる。
(4)以上によれば、目的効果が同一であって、手続保障も十分でなかったのだから、違法性の承継が認められ、Aの標記主張は認められる。

設問2
(1)について
 Aは、B県に対して本件権利取得裁決の無効確認訴訟を適法に提起できるか。すなわち、「当該処分…の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達成することができない」(行訴法36条)という要件を満たすか。
 上記要件は、補充性の要件であるところ、その趣旨は、広く抗告訴訟の利用を認め、もって、国民の権利利益を保護する点にある。従って、これを厳格に判断する必要はなく、他の訴訟と比べて、無効確認訴訟がより直截的な方法といいうる場合には、補充性の要件を満たすと考えるべきである。
 本件では、C市に対しては本件土地の所有権確認訴訟を提起することが考えられる。かかる訴訟は民事訴訟であって、いわゆる争点訴訟(行訴法45条1項)に該当する。そして、かかる訴えを提起すれば、Aとしては、本件土地所有権が自己に帰属することが認められるから、権利利益の保護として十分とも思える。
 もっとも、その争点は、本件土地所有権の前提となる、本件事業認定の無効の瑕疵の有無、ひいては、その本件権利取得裁決の無効の瑕疵の有無にある。そうであるならば、Aとしては、Cに対して本件土地の所有権確認訴訟を提起するよりも、直接B県に対し本件事業認定及び権利取得裁決無効確認訴訟を提起したほうがより直截的であるといえる。従って、上記補充性の要件を満たす。
 以上によれば,Aは、標記の訴えを適法に提起することができる。
(2)について
 Aは、本件事業認定は、法20条3号の要件を充足せず、違法であるとして以下のように主張する。
 ア まず、道路ネットワークの形成について。この点、B県は、法20条3号「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」という文言の抽象性、いかなる場合にその要件を充足するかは周辺地域の交通量や住環境等、諸般の事情を総合しなければならないことを理由として一定の裁量権が認められることを反論として主張する。そして、本件道路の交通量は1日あたり約3500台であり、周辺環境への影響が軽微であり失われる利益が大きいとはいえず、このような判断も裁量権の範囲内である、と反論する。
 まず、裁量ある点については、B県主張の通りである。もっとも、その逸脱・濫用ある場合には、違法事由となる(行訴法30条)。
 本件では、平成元年調査のときには,整備が見送られていたのに、平成22年調査予想では3分の1に減っている点で、疑問が生じている。そして、その調査手法には誤りがあり、正確性にも疑問が残る。加えて、道路ネットワーク形成の必要性にも疑問があり、仮に必要としても、かえって通過車両の増加により、良好な住環境破壊の懸念もある。以上の事実関係からすれば、正しく調査が行われたか否かに疑義があり、本来考慮すべき住環境等への影響を十分に考慮せずに、かかる判断を行ったといえる。
 イ 次に、通行者の安全確保の点について。B県は、小学校への騒音等の影響を緩和することを考慮して、一定の距離をとるよう、本件道路のルートを決めていると反論する。もっとも、その際、自然環境の保護につき、学術上貴重な生物が生息しているわけではないとして特に考慮されていない。たとえ、学術上貴重でなくとも、近隣の小学校の教育への利用等の可能性もあり、そのような生物であるからといって、これを考慮しなくてよいということにならない。従って、少なくとも、騒音を緩和しつつ、自然環境にも影響を与えないようなルートの有無を検討すべきであったにもかかわらず、B県はこれを十分に考慮しなかった点で、考慮不尽といえる。
 ウ B県は、地域の防災性の向上の必要性の見地から、本件土地での掘削についても、深さ約2mであるから、地下水には影響しないと反論する。しかし、過去、深さ2mでの掘削でも井戸がかれたとの事実がある。よって、調査しなければ、生活用水として利用されている井戸に真に影響ないとは言い切れないはずである。そして、防災目的の井戸についても、影響の有無は調査されていない。従って、この点でも、本来考慮すべき事項を十分に考慮していないといえる。
 エ 以上を総合すると、B県は、本来考慮すべき事項を十分に考慮することなく、上記判断をしており、その結果、社会通念上著しく妥当性を欠くことは明らかである。ゆえに、裁量権の逸脱・濫用として、違法である。

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