司法試験黙示録 @gouyokunakaze

3回目受験生。再現答案とか適当に書いてる。ツイッター→@gouyokunakaze

カテゴリ:法律科目 > 刑事訴訟法

さて、最後は刑訴。あまりいい評価じゃないから偉そうなことは言えませぬ。

【1回目】
 D評価だった。捜査は、捜索差押えだったかな、確か。おとり捜査とかビデオ撮影なら良かったんだけど、捜索差押えには苦手意識があった。それが露呈したって感じかな。この頃は、刑訴における法的評価がどれだけ大切か、という意識がなかったのもある。
 証拠法は、弾劾証拠。ふわっとしか覚えてなくて、きちんと抑えきれてなかったのが正直なところ。こっちは、当てはめが少なかったのもあるけど、抽象論もだいぶ怪しかったと思う。

 やべえ、こんなレベルしか思い出せねえ。まあ、いいか。

 その後、先輩や優秀な友人のアドバイスで、法的評価の重要性を知る。伝聞も1ミリくらい前進。そして、受けた2回目。

【2回目】
 が、結果はC評価。まあ、理由は明らか。まず、捜査は写真撮影だったわけだが、ここは悪くなかったのだろう。仮に、ここが悪ければもっと沈んでいるはずだから。捜査で持ちこたえた。

 やらかしは伝聞。平成30年は、ちょっと聞き方が特殊だったんだよね。正解筋は、非伝聞用法と伝聞用法両方に答えなけれればならない。でも俺は、非伝聞パターンを2つ書いて、伝聞パターンを書いてないんだよねえ。「なんで?」って聞かれると、伝聞を芯で理解してないのと、問題文の聞き方に困惑したってところ。詳しくは自分で解いてみてくれ。
 その結果、当然に、配点があるであろう伝聞例外の処理も0点になるわけで・・・。これで、一気に落ちたのかと。いやあ、マジで伝聞嫌い。

 それでも、捜査法分野の向上という収穫はあった。あとは伝聞もっともっと頑張るぞって気持ちを得た。そして、挑んだ3回目。

 「いや、刑訴も学説かーい」
 「よりによって当てはめ特殊になる別件逮捕かーい」
 「伝聞出えへんのかーい」


俺の努力を打ち砕く試験委員に憤りを感じつつ、これ終われば論文試験から解放されるという想いで踏ん張った。その結果となる再現答案、詳しい感想は別記事をどうぞ。

ところで、5chを見ていると、刑訴は割と叩かれている印象。というのは、理論面で矛盾があるとのこと。習ったように書いただけなんだけどなあ、と思いつつ考えてみるとちょっとわかってきた。

俺の(1)で書いたのは、神戸まつり事件を元にしている。これって、別件基準説に本件基準説の発想を読み込んだものなんだよね(と聞いている)。だから、別件基準説そのものではない。これに対し、(2)は本件基準説を採用した(つもり)。
 その結果、(1)では補助的に、(2)ではメインで本件の目的の有無を考慮することになり、「どっちも捜査官の主観いれてるやん」「(2)の批判が(1)にも当てはまるやん、矛盾やん」となってしまったのだろう。一応、(1)と(2)では捜査官の主観の時期をずらしたつもりだったが、当てはめみるとたしかに変なんだよなあ、と。総じて、5chの批判はもっともということになる。

 それでも若干の期待を寄せるのは、事実を多く拾ったこと。そして、(2)で矛盾が生じたとしても、(1)それ単体では、一応の筋が通り、点数が入る可能性もあること。もちろん、法律論相互の関係で減点とかもありうるが。
 また、判例を知り尽くした試験委員が、「お、これは神戸まつり事件やないか!ならこれも一つの考えや、一応OKにしたろ」としてくれる可能性にも淡い期待を抱くことにしよう。

 設問2は真ん中くらいじゃないかな。訴因変更の可否は普通に書いて、公判前のとこは、ややいい加減。時間制限なんかも考えると真ん中くらいに収まるのではないか、と。

 気になる成績評価だが、ほんとに読めん。俺の期待どおりにいけばBまでのぼってくれそうな気もしている。一方、5ch指摘の通り、法律論での矛盾が致命傷にまでなってしまうと、Dあたりまで落ちることもあろう。E・Fはないと思う、さすがに。間をとってCにしておくか?どうしよう。

・・・Bで。(フラグとか言うな)

【設問1】
別件逮捕はまあいい。が、なんか刑法パクったろの精神で謎の(2)が。しかも、伝聞じゃねえのかい。

 別件逮捕の問題といえば、想起されるのは平成23年の問題。過去問はLIVE本準拠で演習していたから、別件についての逮捕→勾留→余罪取り調べっていう流れで準備していました。そして、そのままの流れで書くことに。
 逮捕の理由んとこ、「…相当程度の蓋然性」っていう定義を、「…明白性」にしてしまった。ミス。そして、必要性で規則引いたけど、ここで逃亡のおそれ認定もしたから、勾留要件書くことなくなるという。87条1項だけ引いたけども。
 で、余罪取り調べ。考慮要素明確に暗記してはなかったから、まあある種のでっちあげ。普段は、考慮要素って、当てはめんとこで合わせて書くようにして前出しはしないんだけど、一応書いておいた。自分の整理のためでもあるけど。
 本番でどこまで丁寧に事実引いて評価したかはどうでしょうね。それなりには書いているはずだけども。とりあえず思ったのは、「本件(強盗致死)のほうが取調べ時間長いけど、別件の空き時間にやってたっぽい感じだし(というか別件は他の証拠固め初めてるし、自白取りに行かんでもとりあえずええやろみたいなイメージ)、セーフ!! 後半で違法にするってのも決めてたから適法にしなきゃいけないってのもあったけども。

 んで、(2)。まあ、ここはTwitterでも5chでもいろいろ言われているところでしょうが、僕なりに現場で思ったことを。
 まず、設問の指示を分節すると、
①「1とは異なる結論」
②「を導く理論構成」
③「具体的事実を摘示」
④「これを採用しない理由についても言及」 となる。

まず、①。シンプルなのは適法→違法、違法→適法でしょう。もっとも、逮捕・勾留・身体拘束と3つに区別できるし、部分的に結論を変えるというのも「異なる結論」には当たるだろうからこれもアリだよね、きっと。
で、②。事実の評価で対立させればよいみたいな指摘が一部あったけど、事実の評価って「理論構成」とは違うんじゃないかなーと思ったり。事実の摘示は、③であって、やっぱり素直に考えると「理論構成」≒法律構成と読み替えるんじゃないかなー。個人的な見解です。
③、まあこれは要するに、抽象論で終わらすなということでしょう。
④もまあ書いてりゃいい。

 次の問題は、1と2のバランス。つまり、1も2も同じ分量が求められているのか、1をメインで2は少なめか。私は、後者だと思っている。というのも、採用しない理由まで求められていること。あえて採用しない内容でゴリゴリ書くことを求められているとは思わん。

 最後に、どの説を書けばいいのか。知らん。実態喪失説なんて知らんわ。まず、基本書として使ってたリークエには①〜⑤として5つの説が紹介されているが、「実態喪失説」という言葉そのものがない(1版だけど2版なら書いてあるのか???)。そして、③〜⑤の説はサラッと流し読んだだけ。
 平成23年出題趣旨。こっちも「別件基準説と本件基準説を中心に多様な考えた方があるところであり…」とされてるだけ。
 果たしてそこまで求められていたのか、どうなんでしょうねえ。ちなみに私は、別件は余罪取り調べの問題として適法→後段は、本件基準により違法としています。実は、上に書いた「1をメインで2は少なめに」というのと上手くハマってると思ってるんだよねー。前段はゴリゴリ当てはめ、後段はPが他に罪ねえかなって社長説得してたあたり使って目的認定、みたいな。まあ刑訴得意でもないし深いことはまったくわからんのでここはもうしゃあなし。

【設問2】
 要否は・・・いらんよな?すべきと思ったからこそ検察官は訴因変更しようとしてるわけだし。第一、そんな書く時間ねえ。というわけで書いてません。
 可否はまあ。最低限のことは書いたつもり。でも、「可否の書き方はこれで大丈夫」と誰かのお墨付きをもらったわけでもないので実際は不明。
 んで、公判前うんぬん。後でノートみたら百選あったね、全く思い出せんかった。とりあえずここらへんはでっち上げ規範使って、社長が急に言い出したんやからしゃあないやろって感じで書いてます。まあ案の定書きなぐりだけどみんなそうだよね、ここらあたりは。

 というわけで、結局設問1の正解筋は不明なわけだけども。一応の水準は、、よーわかりません。ひとつ言えるとしたら、例年は、刑訴については理論部分、いわゆる「論点」は書いて当たり前で、むしろ評価が勝負(民法とかわりと法律構成気がつけば勝ちみたいなとこあったし)。でも、今年は理論面も謎になった結果、そこでも差がつく可能性が出た、と。言い換えれば、評価得意マン=必ずしもAとは言い切れないし、評価不得意マンでも多少は点数が上がる可能性がある、みたいな感じかな。もっとも、それでも具体的事実とその評価が最重要なのはいわずもがなですが。

 成績評価は、うーん。真ん中くらいかなあ、得意でもないし。というわけで、主観的評価は・・・C!
やっと書き終わったあああああ。

設問1
1.下線部①の逮捕、勾留、引き続く身体拘束の適法性について
 甲を業務上横領の被疑事実で逮捕等した行為は、いわゆる別件逮捕に当たると考えられるところ、その適法性については、余罪取調べの限界として考えれば足りるから、別件自体がそれぞれ要件を満たす限りは適法である。
(1)通常逮捕
ア 「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」(199条1項)
 特定犯罪と犯人性が明白な場合をいう。
 Pは、甲の勤務していたX社社長から甲が過去に3万円を横領した旨の供述を受け、その被害届も出されている。そして、甲に3万円を渡したとのAの供述調書や、その記載のなる帳簿類がなかったとの捜査報告書もある。このような事実関係からすれば、業務上横領事件という特定犯罪及び、その犯人が甲であることの明白性が認められるから、標記要件を満たす。
イ 「逮捕の必要性」(199条2項)
 逃亡のおそれ又は罪証隠滅のおそれある場合をいう(規則143条の3)。
 甲は、単身生活し、無職でもあり、預金残高も1万円と少額で、不安定な地位にある。そして、法定刑が最長10年であることも考慮すると、甲が、起訴をおそれて逃亡するおそれがあったといえる。ゆえに、必要性も認められる。
ウ そして、上記の要件のもと、発布された逮捕状により逮捕しているから、適法な逮捕である。
(2)勾留(60条)
ア 「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(60条1項柱書)
 上記(1)で述べたとおり、認められる。
イ 「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」(同条1項3号)
 上記(1)で述べたとおり、甲に逃亡のおそれが認められる。
ウ 「必要がないとき」でないこと(87条反対解釈)
 特にこれを否定すべき事情もない。以上によれば、勾留も適法である。
(3)余罪取り調べの適法性(=身体拘束の適法性)
 余罪取り調べについての明文の規定はない。しかし、仮にこれを無制限に可能とすることは、令状主義(憲法33条)の精神を没却しかねない。一方でこれを禁止する規定もなく、現実にこれを行うべき必要性ある場合も否定できない。以上からすれば、各犯罪の罪質や、それぞれの証拠の獲得状況、捜査の重点の置き方や時間、捜査官の主観的意図等を考慮し、令状主義の潜脱と認められる場合に限り、違法となると考える。
ア まず、本件は強盗致死傷事件であり、別件は業務上横領事件である。前者は、身体犯であるとともに死亡結果まで起きており、死刑まで法定されている(刑法240条)。一方で後者は、被害額も少ないのもであり、本件のほうがそのより重い事件であるといえる。
イ 証拠の点について。別件について、まず甲は否認している。もっとも、返済を迫っていたYとの待ち合わせの事実が判明し、Yから甲が臨時収入があったから金を返すと発言した旨の供述調書を得ている。また、防犯カメラ映像についても、H店には甲が確認できず、また、I点については画像確認に時間がかかっていた。一方で、A宛の領収書データが甲のパソコンから発見されるに至ってもいる。
 一方、本件についても、一貫して甲は否認していたが、3月15、2ヶ月分の家賃が振り込まれたとの大家の供述調書を端として、甲が原付自転車を売却したことも明らかとなり、ついには入金状況等への追求を契機として、自白するに至っている。以上からすれば、別件の証拠収集活動を主に行っていたといえる。
ウ 捜査の重点や時間について。別件については計20時間、本件については倍の計40時間の取り調べが行われている点で本件に重点を置いているようにも思える。もっとも、Yの都合上、Yの取り調べは16日までなしえず、防犯カメラ映像についても修理中であり、その確認はやむを得ない事由により遅れている。その間、別件については取り調べ以外の手法により、裏付け捜査やパソコンデータ精査等による証拠収集活動を行っていたのであり、その時間を利用して、甲の本件についての取り調べを行っていたと認められる。よって、必ずしも本件に重きがあったとはいえない。
エ 捜査官の主観について。別件逮捕の際、本件の逮捕も視野に入れて、捜査は並行して行われており、本件について逮捕するに足りる証拠の獲得をも目的としていたと認められる。
オ 以上を総合すると、本件についての取り調べ時間が多い点は否定できないが、これは別件をメインとして行われたものであり、別件について他の証拠収集をし、取り調べが不要な時間に本件の取り調べをしたと認められる。よって、令状主義の潜脱とまではいえず、適法な取り調べであったといえる。よって、身体拘束も適法である。
2.異なる理論構成について
(1)構成
 上記に対し、本件基準説があり、本件を目的とする捜査手法に当たる場合には、違法である。
 Pは、本件についての証拠が不十分であることから、別の罪の嫌疑がないかと考え、X社社長か別件についての情報を得ている。そして、X社社長が被害額が少額であることや世間体から被害届を出すことを渋ったにもかかわらず、繰り返し説得を続けてこれを得ている。このようなPの手法は、本件について捜査を進めるために、別件で甲を引っ張ろうとの目的であるといえる。従って、かかる手法は違法であり、これに基づく逮捕、及び、勾留、引き続いて行われた身体拘束も違法となる。
(2)採用しない理由
 このような考えは、捜査官の主観を考慮するものであるが、令状審査の段階において、裁判官が捜査官の隠れた意図を見抜くことは事実上困難である。また、同時に2つの被疑事実について捜査すべき必要ある場合も否定できない。加えて、並行して捜査を行うほうが被疑者にも便宜的な場合もあり、これを認めないとすると、かえって不当に身体拘束期間が長くなるおそれもある。以上の理由から、このような理論構成は採用できない。

設問2
 下線部②の訴因変更の請求を、裁判所は許可すべきか。
1.訴因変更の可否
ア 訴因とは、検察官が主張する特定の構成要件に該当する具体的な事実をいう。そして、訴因変更は、「公訴事実に同一性」(312条1項)ある場合に認められるところ、その趣旨は、被告人の処罰理由の渉猟的探索の禁止にある。従って、その意義は、基本的事実関係が社会通念上同一である場合をいい、両者の共通性の有無により判断される。そして、重なり合いが少ない場合には、非両立の観点も加味される。
イ 公訴事実(以下、それぞれ単に1、2とする)1も2も、日付は同じ平成30年11月20日である。そして、場所は、A方付近から、A方とされているがいずれも同一性の範囲内といえる。また、いずれも財産犯かつ領得罪であり、3万円の被害額も同じであるから行為態様にも共通する面がある。
 加えて、1の業務上横領罪は、甲の処分権限ある場合に成立し、そうでなければ2の詐欺罪が成立することになる関係にあり、非両立の関係といえる。
 以上によれば、公訴事実の同一性が認められるから、訴因変更は可能である。
2.公判前整理手続きを経ている点について
 公訴事実に同一性あるとしても、本件では、公判前整理手続きを経ているとの事情がある。かかる場合にも、無制限に許されるとすると、手続を経たことが無意味になってしまうのではないか。
 公判前整理手続きの趣旨は、裁判の迅速性を確保する点にある。一方で、公判廷において初めて明らかとなる事実がある場合も否定できない。従って、そのような事実の出たことが、必要やむを得ないと認められる場合には、訴因変更を許可すべきである。
 公判前においては、甲に処分権限あることが前提とされ、弁護人からも主張はなかった。そして、公判において初めてX社社長が、甲に処分権限なかったことを述べており、Aもその事実は知らなかった。甲自身はその認識あったようだが、X社社長が突然公判で上記のような発言をすることは、記憶違い等無理からぬところである。従って、必要やむを得ないと認められる。
 以上により、標記の訴因変更請求を裁判所は許可すべきである。

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