行政法黙示録、裁量についての第2弾です。

本当なら1記事にすべてまとめたいところだけど、文字数が多すぎるのと、通常の裁量論とは明確に区別して論じる必要があるため、その2と題することに。実際、平成29年の司法試験では、通常の裁量論と、当記事の裁量論が両方とも出題されているため、重要なのは間違いない。

まあ、何の話かというと、いわゆる行政規則が出てきた場合の話ね。この場合には、その1で論じたこととは違った論証が必要になります。ざっくり言えば、①行政規則の法的性質→②合理性判断(+当てはめ)→③個別事情審査の論証+当てはめ評価という手順。

[①行政規則の法的性質と法との関係の検討]
行政規則のポイントは、以下のとおり。
1.「法規命令」と対立するものであり、あくまで内部的な基準にすぎず、国民の権利義務には影響しない。ゆえに、法律の委任なく自由に定めることができる。
2.解釈基準(例:通達)と裁量基準(例:審査基準、処分基準←この違いわからないようでは困る、行手法読んでw、行政指導指針)に区別される。ここら辺は、処分性の議論でも出てくる。
3.

試験でまず大事なのは、「あ、これ、行政規則だ!」と気が付けること。もっとも、このあたりは誘導がされることが多く、平成29年では、議事録の中で、”内部基準”という文言が使用されているため、上記1の定義そのまま。そして、その”法的性質…を検討し”との誘導もある。比較的簡単ではあるが、事前にわかっていなければ書くことはできないだろう。


では、肝心な何を答案で書くべきかという点。同年の問題の誘導では、”道路法との関係を検討し”との文言もある。いろいろ考えた結果、ここをスタートにすると書きやすいことがわかった。とりあえずざっとしたストーリーはこう。

〇〇法は、行政庁に裁量を認めている→これを受けて、当該行政庁が裁量基準を設定している→裁量基準ってのは、つまりは行政規則、国民の権利義務に直接の影響がない→これに反しても、裁判所がいうところの「違法」ではない

まずは、このストーリーを書くこと、これが誘導に沿った書き方。これを書けば、最低限、内部基準の法的性質も法との関係も検討したことになる。これを答案チックに書くと、〇〇法からすれば、行政庁には一定の裁量が認められるところ、B市は、これを受けて、裁量基準を設定している。そして、裁量基準は、法規ではなく、国民の権利義務に直接影響しないため、これに違反した場合であっても、原則として、違法ではない。とまあこんな感じ。

時間的制約を考えると、裁量ある根拠の二つとか書いてる暇はないはず。俺も答案ではいつもこれしか書かない。予備校の論パ知らないから、もっと長いのかもしれないし短いのかもしれないが、俺はこれ。それでもローの起案では合格点もらえてたからいいと思うよ、これで。大事なのは、法規命令と行政規則の違いわかってますよー、行政規則に反しても、違法じゃないんですよーってことを伝えることかと。なんなら、裁量基準という言葉を無理に使わなくても、講学上の行政規則に当たるから~という言い方でもいいのかもね。

[②基準の合理性の判断]
ここはざっくりでいいよ。ただ、何も書かないのは怖いけどね。規則といえども、一定の合理性を有している必要があるとこと、本件では、〇〇であるから、合理性も認められる。これでいいと思う。
何でかっていうと、合理性すらない規則なんて出題するとは考えられないから。それってよっぽど糞なルール作っちゃうってことだからね。司法試験でそんな規則さすがに出さんやろ、と。だから、ここは上の書き方で、さらっと一文で合理性の判断までしちゃいましょう。大事なのはこの後だから。あ、注意点は、”規則それ自体の合理性”だからね、問題文の具体的事実使っちゃだめよ。規則そのものチェックするのよ!!

[③自己拘束論・個別事情審査の論証]
ここは、2パターンに分かれる。事実から考えて、以下のAかBか考えてください。
A ”規則どおりにやってくれよ!やらないなんて違法だ!!”
B ”規則どおりにやるなよ!!もっと柔軟に対応しろよ!!”

司法試験ではどちらのパターンも出題される。Aなら自己拘束論を、Bなら個別事情審査義務の論証が必要。似てるけど違うから区別しようね。

〈Aパターン 自己拘束論〉
基準があったら、しかもそれが例えばウェブサイトで公表されていたら・・・。当然その通りやるものと信じる。それが裏切られた。ふざけるな!!という主張になる。答案チックに言うと、(上記合理性判断ののち)もっとも、基準として示された以上、平等原則や国民の信頼を保護する必要がある(ここが理由付け)ゆえに、裁量基準といえども、それを適合しない合理的理由がない限り(ここが規範)、行政機関は、当該基準に拘束され、これと異なる取り扱いを行うことは、裁量権の逸脱・濫用に当たり、違法である。とこんな感じ。
この後、当てはめ。当てはめでは、あえて基準に従わない合理的理由の有無を探す。あれば適法、なければ違法。まあ、ない事例の方が多い印象。特に原告の主張という指示があるときは、違法にもってく必要があるから当然、合理的理由はない、だから違法だ、という結論になる。

〈Bパターン 個別事情審査義務〉
確かに…基準どおりだとそうなんだけどさあ…でも、そんなのおかしいじゃん!融通利かせてよ!!という主張を原告がするときに使う。Aよりなんかごねてる感あるよね、これ笑。でも、函館方面公安委員会事件なんかはこれを認めるような言い回し(訴えの利益の判断の中でだけど)。
答案では、(上記合理性判断ののち)もっとも、裁量基準に厳格な拘束を認めることは、かえって個別事情に応じた柔軟な判断ができなくなるおそれがある(理由付け)。従って、個別の事情に応じ、基準に従うべきでない特段の事情がある場合には(ここが規範)、基準に即した判断は、違法となる。とこんな感じ。
この後、当てはめ。探すべきは、基準に従うべきでない特段の事情。あれば違法、なければ適法。Aパターンとは逆だから注意ね。これも原告筋でいえば、特段の事情がある、ゆえに違法ともってくことになる。

Aは、あえて基準どおりにやらない合理的理由があるかどうか。Bは、基準どおりにやるべきでない特段の事情があるかどうか。似ているようで違う。ただ、やってることは結構似てる気がする。合理的理由、とか、特段の事情って言い回しにこだわるべきかどうかはわからない。規範さえ立てればいいのかも。

なお、AもBもいわずもがな評価は必要。事実を羅列するだけではダメ。まあここも時間ないだろうからまとめて評価せざるを得ないかも。評価ワードは、裁量①の記事とだいたい似たり寄ったりになるよ。

[まとめ]
1.行政規則が問われているときは、その法的性質からスタートしなければならない。←超重要
2.合理性判断はさらっと(どうせ規則そのものには合理性くらいあるから)
3.問題文から自己拘束論で書くか、個別事情審査義務で書くかを読み解くこと。そして論証


この記事と前回の裁量その1を読めば、平成26年以降の本案の問題はすべて解ける、ってのは言い過ぎで平成28年の違法性の承継と要件解釈はダメか。とりあえず平成26年と27年の本案の設問だけでいいからやってみてほしい。そうすると、A・Bパターン両方マスターしたことになるからね。あとは、平成29年の設問4もこれでできる。ぜひとも解くことをおすすめする。